徒然妄想日記

腐った妄想を吐き出す場所。

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看護学生ハボ5

続き。↓


 ナースステーションでの朝のミニカンファレンスの時間。実習生たちは今日の目標と計画を発表しなければいけない。ナースたちが居並ぶ中で発言するのは結構緊張する。しかし実習も一週間以上も過ぎれば度胸も据わってくるというもの。しかもハボックたちは3年目の3クール目だ。それなりに実習にも慣れてきていた。
「本日の…さんの行動計画は…」
 とは言うものの、受け持ち患者が3週間同じなのでやることは毎日変わらなくなってくる。計画は変わらなくても、毎日の目標が同じというわけにはいかないのでかなり苦しくなってきたりするのだった。
 ハボックは今その『本日の目標』を考えるのに必死である。昨夜いつの間にか寝てしまい準備が間に合わなかった上に寝坊してしまったハボックはナースステーションに来るなり慌てて考えていた。
「ハボック君、ハボック君」
 トン、と肩を突付かれてはっと気付く。もうハボックの発表の順番だったらしい。まとまらない頭でなんとか発言したが、何だか滅茶苦茶だった。しかしナースたちも実習生の言うことの中身まではあまり気に留めている様子ではなく、なので注意されることもなくその場は無事に終わったのだが。
 今はナースだけでのカンファレンスだ。患者の情報共有や行動計画についてチームスタッフ同士で話している。こうなるととりあえずハボックたち実習生の出番はなく、後は受け持ち患者の元へ行き血圧などのバイタルサインを測定しに行くことになる。ほっと胸を撫で下ろす。その時丁度長身の医師がナースステーションに入ってきた。
「あっ、ヒューズ先生だ」
 ウィンリィが嬉しそうな声を上げる。聴診器を握り締めて小声でラッキー、なんて言っている。
 その医師はマース・ヒューズという―は看護師に何か告げるとそのまま待っている様子である。ヒューズは外科医なので循環器センターであるこの病棟で見かけることは珍しい。ヒューズは大らかな笑顔で親しみのある男だ。手術の腕もよく医師としての評価も高い。更に、消化器外科の講師としてハボックたちの学校にも出向いているので生徒たちからの人気も高いのだった。その人気はロイと二分する。
「ほら、眺めてないて患者んとこ行くぞ。指導者に見つかる前に動かないとまた何か言われるぞ」
 渋る女子たちを促して、血圧家を握り締めていざ出発。入口に立つヒューズをすれ違う瞬間、ハボックは目が合ってしまった。ヒューズは少しの間黙っていたが、やがてぷっと噴き出した。
(何!?)
 さっきのしどろもどろの発表を見られていたのか、それとも他に何かヘマをやらかしていたのか、それとも何か顔に変なものでもついているのか、きょろきょろと見回して、自分以外に笑われる理由はなさそうだと確認する。
(な、なんだぁ…?)
 尚も笑われ続けてハボックはわけがわからない。
「あの?、何かついてます?」
「いや、何だお前かぁ」
 お前かといわれても。ますます訳がわからないでいると。
「あれ、珍しい顔がいるな。どうしたんですか」
 のんびりとした声が背後からかかった。 
 出た!二重人格!!
「ハボック君とお話してたんですか。ダメですよ、この子も忙しいんですから、ねぇ」
「はぁ………」
 今のロイの顔は慈母のような、完璧に柔和な笑顔である。第三者がいると、途端に被る猫の気ぐるみ。呆れたとかむかつくとかそういうのを通り越していっそ感心してしまうほどだ。
「ハボック、目が赤い。寝不足か?」
 ヒューズがハボックの目元が赤いことに気付いて覗き込んでくる。
「毎晩レポート大変なんス」
 誰かさんのせいで寝つきが悪かったんです、とは声には出さず付け足す。レポートがなかなか仕上がらなかったのは事実だが、ソレより何より、昨夜のロイの言葉で動揺していたせいでもあるのだ。
「引きとめては悪いですね、患者さんのところへ行きなさい。待ってますよ」
 にっこりと笑顔でそう言われて、ハボックはうっと詰まったが、失礼しますと言うと足早にその場を去った。

「何でお前がここにいるんだ」
 口調だけがころっと変わる。表情は穏やかな仮面のままだ。
「ロイに会いにきたわけじゃねーぞ」
 ハボックがいなくなるなり、ロイにそいう言われてヒューズはそう悪態をつきかえした。
「ノックス先生からコンサルト受けてる患者がいるんだよ。ちょっと様子みにきただけだ」
 ヒューズがそう言うのに、ふぅん、と興味なさそうにロイは聞いている。
「さっき笑ってただろう。何言ったんだ」
「気になるか?」
 軽く笑ってヒューズは肩を竦めてみせた。それに対して殊更ににっこりとロイは笑ってみせる。
 ナースステーションでは、こっそりとロイとヒューズの様子を伺っていた看護師たちがロイの笑顔にほぉっと溜め息をついていた。そのロイの瞳がちっとも笑っていないことに気付いている者はいない。
 それはさておき。
「従兄弟君の寝不足の原因、ロイじゃねぇのか?何か言って苛めたんだろう」
「苛めは私の日課だ」
 さも当然のようにさらりと言うロイに、ヒューズは呆れたように笑う。あんま苛めっと逃げられるぞ。
「……何だそれは」
 二人の会話はそこで打ち切りとなった。看護師がカルテを持ってやってきたからだ。
「すみません。お待たせいたしました。それではバンカーさんのお部屋にご案内いたしますね」
 看護師がヒューズを促して歩き出す。
「それではマスタング先生、失礼します」
「ええ、ヒューズ先生」
 すでにお互い、ドクターの顔に戻っていた。

「いや?んvヒューズ先生とロイ先生のトークよ?v」
「もう絶対、東8階か中央8階勤務希望よね!!」
 血圧測定をしに病室へ散ったはずのウィンリィとロゼが遠巻きに麗しのドクター二人を眺めて嘆息していた。それを横切ろうとした瞬間、いきなりユニホームの首根っこをつかまれて引き止められる。
「ぐぇっ!何すんだ、ロゼ!!」
 ゲホゲホと咽ながら、くるりと振り返って怒鳴る。しかし当のロゼはというと掴んだ首元を離そうともせずに、ね、ね、先生たちと何話してたの?なんて期待に満ちた顔で聞いてくる。その隣では同じくウィンリィもキラリと目を輝かせている。
「別に、何も話してないぞ」
「嘘。だってヒューズ先生、ハボック君に何か言ってたじゃない」
「ああ…何かしんないけど笑われた」
「何で笑うの!?」
「知るか」
 いい加減にその手を離せと、ハボックは何とかロゼの手を自分の首元がら離すことに成功した。長身の自分が背の低い女の子に捕まれ引っ張られる体勢というのは苦しいものだ。
「マスタング先生とも何か喋ってたじゃない。何でハボック君ばっかり!」
 と、言われてもですね。
「た、たまたまだよ」
 それはその通りだと思う。何て言ったって天下の猫かぶりキングロイ・マスタングだ。人のいるところでの個人的は会話は殆どしない。ばれたら元も子もないというわけであろう。
すなわち、ロイ曰く。
『私が笑っていた方が、周りは安心するんだ。私の笑顔が皆の幸せ、喜び。それにそのほうが患者の受けもいいしな。人生うまく渡っていくコツだ。わかったか?』
 そう腰に両手をあてて、さも当然と高らかに語ってくださったのだ。
 それなら俺の前ででもずっと猫被っててほしいよな。
「私もマスタング先生とお喋りしたーい」
「代われるもんなら代わってほしいっつーの…」
 ぽつりと一言。何か言った?と問われてハボックはすかさず「何も」と応えたのだった。
 そうだ、そういえば、本気でロイの家に行かなければいけないのだろうか?ドコでそういう話になったのだかやっぱり納得できない。
 まさかこれって新手の嫌がらせとかじゃねぇよな?
 どうしてもいい方向には考えられないハボックだった。
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Author:kirika
煩悩と堕落。
好きなものは鶏からとカレーと抹茶のスイーツ。
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