徒然妄想日記

腐った妄想を吐き出す場所。

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小話

去年の春頃に書きかけていた鋼SSがあったので完成させてみました。
ハボロイ前提ハボ←エドです。

[金色のひだまりの中]


二日間降り続いた雨は止み、今日は雲の合間に晴天が覗いた。春の空は薄くヴェールがかったような淡い青色で、冬のような清廉さも夏のような鮮烈さもない。
窓から差し込む陽射しは柔らかくポカポカと暖かだ。
「ふぁ…」
麗らかな陽気に誘われて思わず出た欠伸をエドワードは噛み殺した。
東方司令部、副司令官執務室。ロイを訪ねてきたエドワードがここに通されてすでに30分が経過している。
「…おせぇ…」
未だ開かぬドアを睥睨して、エドワードは唸るように呟いた。
賢者の石を求めて旅をするエドワードには後見人であるロイに定期的に報告するよう義務付けられている。旅の報告は電話や手紙ではなくきちんと顔を見せること、とは初めにロイが提示した条件だ。文句を言いつつも、東方に戻ってくれば律義にこうして司令部へと足を運んでいるエドワードだ。
しかし、ロイを訪ねてみれば今は忙しいと言われてしまい、仕方なくここで待っているといった具合。副司令官であるロイが多忙であるのもよく分かっているのでおとなしくしているエドワードだったが、そろそろ40分が経過しそうだ。今回は顔出しだけのつもりだったのですぐに戻るからと弟のアルフォンスは宿に残している。オイルが切れたと朝言っていたからおそらく弟も買い物に出かけているのだろうが、そろそろ弟がどうしているか気になってきた。
あと5分しても来なかったら帰ろうと、扉を睨みつけたその時、動かなかった扉がゆっくりと開いた。
「お、何だ大将。来てたのか」
扉の向こうから現れたのは金髪の背高の青年だった。

「失礼しますよっと」
最初からロイがいないことは知っていたのだろう。一応おざなりに言いながら、主のいない執務室に遠慮なく入ってくる。とはいえ、この少尉と上司であるロイの間には普通の上司部下にあるべき上下関係の垣根が元々低いような気がする。
ハボックは躊躇いなく執務室を横切ると、手に抱えていた書類やファイルをロイの机に置いた。
ソファからそれを眺めて思わずといった具合にエドワードは身を引いて息を詰まらせる。
大量のそれらは見るだけで辟易とする。別にエドワードが片付ける仕事でもないけれども、見ただけでうんざりしてしまった。ロイの執務机は埃一つなくいつも綺麗だ。それは掃除が行き届いているからというよりも、埃が溜まる暇もなく次々にこうして書類が乗せられてしまうからなのだろう。
「た、大変そうだな…」
司令官としての役割がどれほどのものなのか、詳しいところまで理解してはいないが、今頃も忙しくしているのだろう後見人の苦労を思う。まあ、同情はしても助けてあげたいなんて思わないのだけど。
それが伝わったのか、ハボックは肩をすくめてみせた。
「これでも少ない方だぜ。いつもはあの人サボるから」
今日は副官の鷹の目が光っててなかなか息抜きが出来てない様子だと教える。
「大佐、待ってんだろ。まだもう少し手が空かないみたいだぜ」
「まじかよ」
ソファの背もたれにうんざりともたれかかったエドワードに苦笑して、ハボックは咥えたままだった煙草に火を点した。プカリと煙がひとつ浮かび上がる。
主が不在の部屋で無許可で喫煙するなんて、本当だったら刑罰ものだと思う。だがしかし当たり前のように、この金髪の少尉はそれをする。
机上にある鈍い銀色の小さな灰皿は、煙草を嗜まない上司がこの部下に与えた特権の証なのだろう。
そういえば、喫煙所がちゃんと備え付けられてある司令部において、所構わず煙草を咥えているのはハボックくらいだ。
「少尉ってほんと、煙草好きだよな」
頭を背もたれに預けたまま、胡乱に目だけを遣って訊けば。
「俺、これないと生きてけませんー」
冗談とも本音ともとれる声音でハボックが答えてみせる。
「それに火種は切らすなって言われてるからな」
プカリ。
もうひとつ紫煙が天井に浮かんだ。煙の行方を追うと、それはゆっくりと溶けるように霧散していく。
「火種って?」
エドワードの問いにハボックは苦笑して煙草を挟んだのとは反対のてで軽く指を打ち鳴らしてみせた。
白い布に包まれた指を前方に突き出してパキンと心地よい音をたてる、その仕草を思い出す。同時に美しくも激しい紅蓮の焔が脳裏に蘇った。いつだったか、彼と勝負に臨んだ時にその焔と対峙したのだが、あれはなかなか苦い記憶だ。
「もしかして火種って、その煙草の火のこと?」
思いついて問えば、咥えている煙草を上下に揺らして肯定する。
「いつでも錬成できるようにしとけ、だとさ。おかげですっかりチェーンスモーカーだ」
やれやれと肩を竦めつつそう語る淡いブルーの瞳が細くなる。それは何となく嬉しそうで誇らしげにみえた。
火種を絶やすな。つまりはずっと傍にいろということと同義。
焔の錬金術は錬成の元となる火がなくては完成しない。その火種を預けるということは最大の信頼の証で傍にいることのできる特権だ。
「ふぅん…少尉は特別なんだね」
「エド?」
「あ、いや、何でもない」
思いがけず、自分の口から出た不満げな声にエドワードは動揺した。慌てて手を振って笑う。
「どうかしたか?」
目の前にしゃがんで視線を合わせてハボックがエドワードの頭を撫でた。短くなった煙草はすでに灰皿に押し付けられていて、その指には苦い香りを残すのみだ。
透き通るブルーの瞳に見つめられて、エドワードは息を詰まらせた。自分自身の感情に戸惑って、目の前がちかちかする。
これは嫉妬だ。
特別に誰かを想うのが羨ましいと思った。誰かに特別にされたいと思った。
誰かの特別、できるならその瞳を自分に向けてほしいと―――。
「あああああああっ!」
目の前がカッと熱くなる。頭を抱えてエドワードはうずくまった。
「え、エド!?」
突然のエドワードの奇行にハボックが慌てて声をかけてくる。
「ちょっと待って…頭ん中整理中…」
心臓がばくばくしている。今顔を上げたら何を口走るかわからない。
「しんじらんねぇ…」
逸る胸を押さえ、エドワードはガシガシと頭をかいた。一つ大きく溜め息をついて、呟く。今の自分は多分耳まで真っ赤だ。熱でもあるのか、そう言ってハボックがエドワードの額に触れてくる。煙草を常飲しているせいでひんやりと冷たいその指を思わず引き寄せた。
二人にはかなりの体格差があったが、油断していたハボックは引き寄せられる勢いのままエドに圧し掛かるように倒れこんだ。結果、ハボックの体に押し潰されてしまい、エドワードは低く悲鳴を上げる。
「わりぃ!大丈夫か?」
ハボックは起き上がろうとしたが、思うように動けずそのまま固まった。エドワードの腕が自分の胴にしっかりと絡まっていたからだ。抱きついてくる子供を振り払うことができずそのまま身動きできないでいる。
「おい、エド…」
「あーちくしょう、何かむかつくなぁー」
唸るように呟いて、エドワードはハボックの胸にぐりぐりと額を押し付ける。
そうだこれはただ羨ましいって思っただけなんだ。悔しかっただけなんだ。うん、多分それだ。この綺麗な瞳を一心に向けられるなんて、ずるい。これはただの子供染みた嫉妬なのだとエドワードは自分に言い聞かせ、切なくなってくる想いの行方をごまかした。
この人はあいつのもので、自分のものになるなんてありえない。想いに気付く前からそれは知っていたことだから。
「少尉、今から俺の抱き枕ね」
「はぁ!?何で?」
「上官命令!!」
自分が下敷きにしている小さな体から唐突に下された命令にハボックは横暴だと叫んだ。それを聞き流しつつ、エドワードは目を閉じる。ハボックは優しいからきっとこのまま一緒にいてくれるんだろう。現にぶつぶつと言いながらもけして無理矢理離れようとはしない。
これくらいは許せよな。
今はここに不在の黒髪の後見人へと向ける。
せめて今だけはこの腕に抱きしめている特権を。




扉を開けて目の前に飛び込んできた光景に、ロイは目を瞬かせた。動かない上司に不審に思ったリザが後ろから部屋の中を覗き込み、「あら」と呟く。
執務室のソファーの上。
並んで眠る金色が二つ。
窓から差し込む陽光にきらめいて揺れる金色の髪。健やかそうにゆっくりと上下する胸。
穏やかなその光景にリザは呆れを滲ませつつも微笑んだ。
「少尉まで仕方ないわね」
「あと30分寝かせておいてやれ。長旅で疲れているのだろう」
足音を立てず、ロイはゆっくりと踵を返した。
「ハボック少尉はどうされますか」
肩越しに振り返ってソファの上の二人を見遣るとハボックもすやすやと寝息をたてている。彼だけ起こせばきっと一緒に少年も目覚めてしまうだろう。
リザの問いにほんの少し考えて、肩を竦めてロイは笑った。
「まぁ…今は少しだけ貸しておいてやるさ」






確か、ハボエドを目指して書き始めたんですが、やっぱりハボロイ前提になってしまったという話。最初はエドにハボが軍人になった理由を話す予定でした。そしてひたすらほのぼのとした話にする予定だったんですが、エドハボになっちゃった(笑)後半の展開が唐突なのは最初に考えていた話を忘れたせいです。ハボロイっつうかロイハボって感じもしますね。
ありがち火種ネタですが、ハボが煙草を所構わず咥えてる理由はコレだというのはデフォだと思っています。

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Author:kirika
煩悩と堕落。
好きなものは鶏からとカレーと抹茶のスイーツ。
あとハボック(もの?)

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